ザ・ガーデン THE GARDEN : 監督インタビュー

ザ・ガーデン THE GARDEN :
監督インタビュー

1990/イギリス・日本・ドイツ/85分/カラー/35mm/1:1,66/日本語字幕
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監督インタビュー

デレク・ジャーマン(以下D・J):インタビュー

タイトルの『ザ・ガーデン』についてお聞きしたいのですが、この題名を初めて耳にしたとき、私はすぐに聖書の創世紀を想起しました。ある意味では人間の苦難の歴史の始まりである、あの失楽園の逸話を。
D・J:最初に企画した段階ではそういう意図はなかったけれども、だんだんこの言葉にふさわしいものが映画に含まれていると分かったんです。聖書にはふたつの庭が描かれていると思う。ひとつはオリジナルな意味での、キリスト教の概念における庭ー完璧で健やかな庭。かつては世界はこの庭そのものであり、全ての生き物は互いに傷つけあうこともなく調和していた…

あなたは現実の庭においても『庭師』でしたね?
D・J:ええ(笑) 実際、全ての庭は「楽園」、天国という理想の世界を焼き直した翻訳版のようなものなんです。庭師たちは皆、完璧な空間をそこにつくろうとするものです。日本の寺院の庭もそうでしょう?

聖書の先入観をもってこの映画を観たわけですが、見終えてからはむしろこの庭とは、つまりあなたの映画が一貫して描こうとしているのは、ある「風景」ではないかと思いました。
D・J:ええ、そうとも言えるでしょう。庭とは普通ではない「風景」だから。

それはまたダンジェネスそのものと言ってもよいのでしょうか?
D・J:ええ、ひとつの庭であるとともに、ダンジェネスそのものだと言えるでしょう。なぜなら僕が映画の中で描こうとした庭とは「廃園」だから。聖書に現れるもうひとつの有名な庭とは古代バビロンの空中庭園です。僕の『ザ・ガーデン』には庭の持つふたつの要素---咲き誇る花の栄華と、その後の荒れ野がともに入っています。

あなた自身にとって「庭」はどんなものにあたるのでしょうか?
D・J:安上がりな情熱のはけぐちでしょうか。ロンドンでは鉢植えの庭しか持ってなかったけれど、いつも庭いじりをしていた。子供の頃はそれこそ一日中、庭いじりか絵を描いていた。学校の園芸大会にも出場したり…。それこそ庭には惹かれてきましたよ、人はみな庭が必要だと思います。

では、ダンジェネスとは今のあなたにとってどういう意味を持つのでしょう。あそこには鳥の保護区がありますが、あなたにとってもサンクチュアリー(聖域)なのか、それとも『テンペスト』に出てくる孤島、孤独なプロスペロの隠れ家のような存在なのでしょうか?
D・J:あそこにはあらゆる意味で…(はっとして)『テンペスト』とは共通点があるかもね。例えばカタストロフィとか。ダンジェネスにはとても特殊な風景が広がっている。この国ではきわめて珍しい景色だ。嵐が海から直に吹きつけ、防風林になるような木立もない。一種の特別地区、つまり聖域なのです。原子力発電所が近くにあるゆえに住民保護政策が取られていて、恐らく新しい住宅建築は許されていないはずだ。以前からの住民でここに残った者もほんのわずか、引退した年寄りか、ほそぼそと漁業を続けている漁師ぐらいで、風変わりなコミュニティを頑強に守り続けている。

あなた自身にとってはどうなのですか?
D・J:気に入ってますよ、もちろん。二分も歩けば海岸だし、いろんなものが打ち上げられているのを見ることもできる。朝は窓から日の出を拝め、夕日が背中に沈むのだって眺められる。一日中、庭いじりをして…散歩している隣人たちが僕の庭を眺めて声をかけてくる。先日、たまたまある有名な写真家が通りすがりに僕の庭を見つけて---ドライブ中に海岸で休憩しようとしてたらしいんだけど、必死にここへ駆けてきて写真を撮らしてくれって言うのさ。結局その写真は新聞の色刷りページに掲載されたりもしたんだよ。庭には植物だけでなく自作の彫刻もあってね。海から流れついたものを使ってランド・アートみたいにしてるんだ。

あの恋人同士の若者たちについてなんですが、彼らは人類の罪を背負って死んでいくのでしょうか、キリストのように…?
D・J:キリストの受難のイメージとの重なりはもちろんあってキリストは架刑に処せられるけれど、知っての通り彼は復活する。だからあの若者たちも最終シーンでは蘇る。それはこの作品のひとつのポイント、メッセージでしょう。

『ザ・ガーデン』がかくもピュアなのは、あなた自身が以前よりピュアになったからでしょうか。『ラスト・オブ・イングランド』におけるあなたは激しい怒りや憤りにとらわれていたように思うのです。
D・J:確かにここには前作よりも温かい感情が流れている。スパニッシュ・ダンスのような祝福のシーンもあるし。より神秘的な雰囲気もあり、それはダンジェネスの風景によるところが大きい。前作の風景は燃え盛る炎だった。ダンジェネスにはそれこそピュアという言葉がふさわしい。植物の生えない小石の岸辺。僕が庭に育てた花も一月の厳しい気候にすっかりだめにされた。強風に小石が動かされ、美しい風紋ができるんだよ…。

たとえ明日が世界の終わりの日だとしても、あなたはきっと種を植えるんでしょうね。
D・J:ええ、君も知っての通り、私は悲観主義者じゃない。怒りと失望に満ちた『ラスト・オブ・イングランド』でさえ最終シーンは生き抜こうと脱出する人々を描いた。私は断固たる楽観主義者なのです。

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